研究者紹介

内藤 久士

順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科長・教授
スポーツ健康医科学研究所・所長
博士(医学)
運動生理学、体力学
毎年体育の日に発表される、国の「体力・運動能力調査」の分析等を担当するなど、
子どもから高齢者まで、運動・スポーツを介した健康づくりに関わる研究や普及に関わる。
NHK Eテレ「おかあさんといっしょ」の体操「からだ☆ダンダン」の監修

ポケット運動教室のご提供

 運動不足の人は世界で10億人以上となっているといわれております。生活習慣病をはじめ様々な病気やQOL(生活の質)の低下をもたらすリスク要因となりますので、運動不足の対策が必要です。当研究室ではこれまで運動器症候群であるロコモティブシンドローム(略称:ロコモ)の基礎研究を行い、その成果を社会に還元するため、地域でのロコモ対策に力を入れております。

文部科学省のセンター・オブ・イノベーションプログラムへの参加とともに、ロコモ度測定や体力アップのための運動教室などを本学さくらキャンパスや、千葉県成田市、富里市、印西市、佐倉市などの近隣自治体で開催しています。運動指導のノウハウをまとめ、2019年より「ロコモ予防運動」のDVD教材をご提供しております。さらに運動教室を継続して実施してきた結果、参加者の中から「指導者(健康リーダー)」を育成できるようになり、認定制度も整備しました。健康リーダーを中心にロコモ予防運動を継続的に実践できております。その裾野をさらに広げるため教材(映像や冊子)を今回リニューアルしました。教材はスマートフォンを用いて利用できますので、いつでも、どこでも、そしてお一人でもあるいは誰とでも一緒に実践してください。

多くの方々から、本教材に対する忌憚のないご意見、また、引き続きご支援ご協力をいただけますようお願いするとともに、本教材が健康寿命延伸につながる一助となること期待しております。
最後となりましたが運動教室の参加や教材制作へ協力いただきました地域の皆様、大学スタッフへ御礼申し上げます。

町田 修一

順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科・教授
博士(医学)
運動生理学、体力医学、基礎老化学
骨格筋の肥大や委縮に関する基礎および応用研究
一般社団法人100年健康アドバイザー協会の監修

いつまでも自分らしく「動けるからだ」づくり

~何度からでも筋肉は鍛えられることをサポートする~

 筋肉(骨格筋)量や筋力を高めるための活動である「筋活」という言葉をご存じでしょうか。就職活動や結婚活動の略語である「就活」や「婚活」は、広く知られています。こうした「就活」や「婚活」は、ライフステージの中で、ある特定の時期に行う活動です。一方、「筋活」を行う時期はと問われれば、「ライフステージの全てです」というのが私の答えです。

 人間は動く生き物であり、私たちが動くことによって健全な発育発達や健康が促されることが、改めてわかってきました。動く原動力を生み出すのは、筋肉です。そして、運動・トレーニングによって、筋肉量を増加させたり、筋力や筋持久力等の筋機能を向上させたりすることができます。逆に、楽をしようとして筋肉を使わなければ、筋肉量や筋力、筋機能は低下してしまいます。つまり、筋肉は正直なのです。

 健康で自立した生活を営むためには、筋肉を維持することが欠かせません。そして、筋肉を積極的に動かすこと、すなわち「筋活」に取り組むことは、生活習慣病や認知症の予防改善、さらに健康寿命の延伸にも効果的です。しかし、筋肉量は加齢に伴い低下しやすくなるため、早くから予防に取り組むことが大切です。高齢社会を生きる全ての国民が、いつまでも自分らしく「動けるからだ」づくりができるように、私は研究者としての自覚と覚悟をもって、科学的な根拠に基づく提案やサポートができるように精一杯に取り組んでいます。

棗(なつめ) 寿喜

順天堂大学COIプロジェクト室・特任助教
博士(スポーツ健康科学)
運動生理学 運動生化学
骨格筋の形態および機能向上の為のトレーニング方法の開発・運動とエピジェネティクス
近隣の総合型地域型スポーツクラブや市民団体などでの運動指導

継続は力なり

 これまでに我々はロコモティブシンドロームを予防する為にいつでも・どこでも・誰でも取り組むことが可能な運動プログラムを開発するとともに、その効果検証と普及に取り組んで参りました。実際に運動プログラムに参加した方々

からは「階段の上り下りが楽になった」「早く歩けるようになった」「疲れにくくなった」など多くの喜びの声を頂いております。しかしながら、得られた運動の効果は、一度運動を中断すると容易に消失してしまうため継続して実施することが必要不可欠になります。

 そこで我々順天堂大学では運動の継続的な実施を後押しするため、近隣の各市町村と協力して運動プログラムを指導することが可能な認定指導員の養成に取り組み、運動教室の講師を担当してもらう等、持続的に運動を行うことが可能な環境の整備に努めております。

 私自身もこれまでの運動経験から運動を継続しておこなう大切さを実感しております。そのため今後も運動を継続しやすい環境の整備や運動指導を通して、継続して運動を実施することの重要性について皆様にお伝えするとともに、多くの方に運動を取り組んで頂く機会を提供することで超高齢化社会を迎えた本邦の健康維持・増進に寄与していきたいと考えております。

沢田 秀司

順天堂大学COIプロジェクト室・博士研究員
博士(生命科学)
健康運動指導士、日本陸連公認ジュニアコーチ
生命科学、体力医学、老年医学
運動が老化に及ぼす生体メカニズム
高校、民間企業、病院、地域での運動指導
2009年11月3日以来「1日最低5Kmは走る」を継続中

人生の先輩方が「歳のせい」と諦めない社会を目指して

健康寿命が障害されるリスクを評価し得る概念として、ロコモティブシンドローム(以下、ロコモ)、サルコペニア、フレイルといった概念が提唱されています。これらはいずれも、重篤になると要支援・要介護に進展すると考えられます。それに向けた対策として「いつまでも自分の力で動ける状態を維持すること」を目指す取り組みが必要であり、運動・栄養・休養のバランスがとれた生活が求められています。しかし、「具体的な運動の方法がわからない」など、実現を妨げている課題が存在することも事実です。

順天堂大学では、こうした課題を解決に導くため、主に地域在住の方々を対象とした運動教室を開催してきました。また、私自身は生命科学・スポーツ健康科学からのアプローチによって「ロコモ、サルコペニア、フレイル」の解決に向けた研究活動を行っていますが、常に臨床や運動指導の現場との橋渡しになれるよう意識をしてきました。

こうした活動に携わる中で、健康寿命の問題に向き合おうとする多くの人生の先輩方に接する機会を得てまいりました。そうした方々の人生経験から多くを学び、そして自分の培ってきた全てでもって、「より善く生きたい」という思いに応えていくことの大切さを改めて実感しています。こうした活動を継続することによって、健康寿命の延伸が実現されることに貢献し、最終的には国民が何歳になっても「歳のせい」と諦観しない社会を実現したいと考えています。

幸せな人生を歩むため、若い頃から運動習慣をつけよう

私は現在、私立大学の医学部医学科において、『メディカルフィットネスの理論と実技』という講義を担当し、医学生に向けて運動の重要性を伝える役割を担っています。また、2つの国立の高等学校において、陸上競技部での指導にも従事しています。

こうした経験を続けてきた中で感じているのは、運動に関心を持つ学生が次第に少なくなってきているということです。厚生労働省から報告された『平成30年国民健康・栄養調査』によると、運動習慣があるということを「1回30分以上の運動を週2回実施し、1年以上継続している」と定義した場合、これを満たす20代男性は17.6%、20代女性は7.8%でした。これらはいずれも、30代以上のどの年代よりも低い数値となっています。

このように、若い頃に運動習慣がないことは、40代や50代のいわゆる「働き盛り」を迎える頃、生活習慣病に陥ってしまうリスクに繋がることが懸念されます。また、60代以上のいわゆる「第二の人生」を迎える頃、ロコモ、サルコペニア、フレイルといった健康寿命が障害されるリスクに繋がることが懸念されます。

私は、若い世代が将来健康的に年齢を重ねていくためにも、学生時代に運動やスポーツを楽しむ中でしっかりと体をつくり、またスポーツで目標に向かう努力を重ねることで心を育てていくことが、とても大切であると考えています。幸せな人生を歩むために、若い頃から運動習慣をつけましょう。