NEWS&TOPICS

Home  /  NEWS&TOPICS   /   STAY HOMEと心身の健康⑩

STAY HOMEと心身の健康⑩

座位行動時間②

順天堂大学COIプロジェクト室 博士研究員
沢田秀司

 COVID-19(新型コロナウイルス感染症)に端を発し、新たな生活様式への対応が必要となっています。STAY HOMEを心掛けた生活で心身の健康を守っていくためのポイントについて、シリーズでお伝えしていきます。今回は、前回に引き続き、座位行動時間について取り上げます。

 2020年11月25日、世界保健機関(World Health Organization: WHO)が2010年に発表した「身体活動に関するガイドライン」を改訂し、「身体活動および座位行動に関するガイドライン」を発表しました(※1)。そして、日本運動疫学会、国立健康・栄養研究所、東京医科大学、厚生労働科学澤田班によって「WHO身体活動・座位行動ガイドライン要約版の日本語訳」が作成され、2021年2月16日に公表されました(※2)。

 10年ぶりの改訂となった既述のガイドラインのタイトルにも「座位行動(sedentary behaviour)」という文言が含まれているように、座位行動と健康との関連が注目されています。先行研究によって、座位行動時間が長いこと、すなわち座っていたり、横になった姿勢でいたりする時間が長いことは、健康状態に対して以下のような影響を与えることが示されました(※3)。

  • 全死因による死亡:22.0%増加
  • 心血管疾患による死亡:15.0%増加
  • 心血管疾患の罹患:14.3%増加
  • がん(乳がん、大腸がん、子宮体がん、卵巣がん)による死亡:13.0%増加
  • がん(乳がん、大腸がん、子宮体がん、卵巣がん)の罹患:13.0%増加
  • 2型糖尿病の罹患:91.0%増加

 そして、こうした知見を踏まえ、2020年版の「身体活動および座位行動に関するガイドライン」において、座位行動と健康との関連性についての推奨が初めて示される運びとなりました。具体的には、子どもから高齢者、妊娠中および産後の女性、慢性疾患のある人や障害のある人を含む全ての人々にとって、座りすぎは不健康に繋がるものであることが明記されました。また、健康効果を得るために、座位行動を身体活動(強度は問わない)に置き換えることが推奨されました。

 更に、全ての人々にとって有酸素トレーニングや筋力トレーニングを組み合わせて実施することが効果的であり、高齢者(65歳以上)にとってはバランストレーニングを加えることも有益であると示されています。特に筋力トレーニングの具体的な方法として、順大さくら“筋活”講座にて紹介している運動プログラムも、参考にしていただければ幸いです。

 前回も記したことですが、コロナ禍が長期化してしまうことを見越し、長い目で心身の健康を保てる習慣を身に付けることが望まれます。そのためには、「定期的に運動しよう」という意識を持つことも当然素晴らしいものではありますが、「座っている(あるいは、横になっている)時間を短くしよう」という着眼点を持ち、なるべく生活の中で身体を動かすようにしていただくことも有用です。

 次回は、筆者自身の取り組みについて紹介させていただけたらと構想しています。しかし、本記事の執筆により座位行動時間がとても長くなってきてしまったため、まずはこの辺りで一旦筆を擱かせていただきます。

※1:WHO guidelines on physical activity and sedentary behaviour. Geneva: World Health Organization; 2020.
※2:http://jaee.umin.jp/doc/WHO2020JPN.pdf(閲覧日:2021年2月24日)
※3:Biswas A, et al. Sedentary time and its association with risk for disease incidence, mortality, and hospitalization in adults: a systematic review and meta-analysis. Ann Intern Med. 2015 Jan 20;162(2):123-32.

 
pagetop