レモンマートル抽出物は高齢者における低負荷自体重レジスタンストレーニングによる筋肥大を促進する
順天堂大学スポーツ健康科学部
助教 沢田秀司
この度、私たちの研究グループでは、高齢者を対象に実施した2つの独立したランダム化比較試験の結果として、「レモンマートル抽出物は高齢者における低負荷自体重レジスタンストレーニングによる筋肥大を促進する」との研究成果を報告いたしました。本論文は、The Journal of nutrition, health and aging誌にて、2025年10月11日に公開されました。
レモンマートルはオーストラリア原産のハーブで、その葉のエキスには抗菌作用、抗酸化作用、抗炎症作用のあることが知られています。近年、レモンマートルエキスとその活性化合物(カスアリニン)が、筋損傷後の筋細胞の再生に不可欠な骨格筋サテライト細胞の活性を高めることが報告されました(doi: 10.3390/ nu14051078)。こうした知見から筋肥大効果に対する有用性に着目し、小規模の予備的研究の結果として、筋肥大を促進する作用を有することを2024年12月に報告していました(doi: 10.31989/ ffhd.v14i12.1472)。
本研究では、筋量や筋力、歩行速度の低下を自覚している65歳以上の方々を対象としました。そして、運動介入として、低負荷筋トレ(スクワット、スプリットスクワット、プッシュアップ、クランチの4種目)を週2回の頻度で12週間実施し、65名を対象とした研究1では1回につき3セットずつ、60名を対象とした研究2では1回につき1セットずつ実施しました。研究1,2のいずれにおいても、参加者を無作為にレモンマートル(LM)群とプラセボ群の2群に分け、LM群の参加者にはLMの錠剤(カスアリニン2.5 mg/2粒を含有)、プラセボ群の参加者にはセルロースなどからなる同じ外観の錠剤をそれぞれ摂取してもらいました。その結果、12週間の低負荷自体重トレーニングによる筋肥大効果がレモンマートル抽出物の摂取で促進されることが明らかになりました。
本研究で得られた知見は、日頃から“筋活”に取り組まれている皆様にも関心を持っていただけるものと思います。研究成果の詳細は、以下の文献をご一読いただけますと幸いです。また、日本語での解説記事が一般社団法人日本スポーツ栄養協会の公式情報サイト「スポーツ栄養Web」に掲載されていますので、そちらも併せてお目通しください。
<著者>
Shuji Sawada1), Azusa Nishino2), Shinichi Honda2), Yuji Tominaga2), Shiori Makio3), Hayao Ozaki1) 4), Shuichi Machida1) 5)
<著者(日本語表記)>
沢田秀司1), 西野梓2), 本田真一2), 富永雄仁2), 槙尾栞3), 尾崎隼朗1) 4), 町田修一1) 5)
<著者所属>
1)順天堂大学スポーツ健康科学部、2)株式会社カネカ、3)順天堂大学大学院医学研究科、4)東海学園大学スポーツ健康科学部、5)順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科
<論文タイトル>
Lemon myrtle extract enhances muscle hypertrophy induced by low-load bodyweight resistance training in older adults: Findings from two independent randomized controlled trials
<論文タイトル(日本語訳)>
レモンマートル抽出物は高齢者における低負荷自体重レジスタンストレーニングによる筋肥大を促進する:2つの独立したランダム化比較試験の結果
<掲載先>
J Nutr Health Aging. 2025;29(12):100706.
<DOI>
10.1016/j.jnha.2025.100706
本研究は株式会社カネカのサポートを受けて実施されました。ご協力いただいた皆様に深謝いたします。