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STAY HOMEと心身の健康③

睡眠障害

順天堂大学COIプロジェクト室・博士研究員
沢田秀司

 COVID-19(新型コロナウイルス感染症)に端を発し、新たな生活様式への対応が必要となっています。STAY HOMEを心掛けた生活で心身の健康を守っていくためのポイントについて、シリーズでお伝えしていきます。第3回の今回は、心の健康に着目し、そのトラブルの一つである睡眠障害について取り上げます。

 感染症そのものや、外出自粛や経済状況の変化などによって、心の健康が損なわれることが心配されます。実際にアメリカでは、外出制限令が敷かれる際、インターネット上での「不安」や「自殺」といった心の健康に関連する用語の検索が急増したと報告されています(※1)。こうした非常事態の中長期的な影響によってもたらされるものの一つとして、睡眠障害が挙げられます。2011年3月11日に発生した東日本大震災の半年~1年後の調査でも、睡眠障害を訴える方が15.0%いたことが報告されています(※2)。また、睡眠障害は、感染症や災害による直接的なストレス(一次ストレス)と、生活環境の変化に伴う間接的なストレス(二次ストレス)が複合的に生じることで、遷延し易くなります(※3)。さらに、今後予期されるストレスによっても、睡眠に悪影響が及ぶとされています(※4)。COVID-19の深刻さや、社会・経済活動の先行きの不透明さは、人々の休養の質に大きく影響していく可能性があるのです。

COVID-19に起因する不安やストレスへの適切な対処法として、以下の4つが大切であるとされています(※5)。

  • ニュースから少し距離を置くこと
  • 定期的な運動やバランスの取れた食事を心掛けること
  • 自宅でできる楽しみを見つけること
  • 友人や家族と連絡を取り合うこと

また、良質な休養を確保するためには規則正しい生活を送ることが大切であり、日中は活動的に過ごすことが重要です(※6)。身体の健康を保つための基本は、運動・栄養・休養のバランスを整えることです。今後もSTAY HOMEを心掛けていく上で、改めて運動の習慣化を目指していただきたいと思います。楽しく運動を実施でき、そして運動がきっかけとなってご友人やご家族と頻繁に連絡を取り合えるようになれば、なお良いでしょう。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)によって、人々の間には「ソーシャルディスタンス(社会的距離)」という見えない壁が築かれてしまいました。そんな今だからこそ、人と人の絆を今一度深めるとともに、運動の大切さを共有していきましょう。

※1:Jacobson NC, et al. Flattening the Mental Health Curve: COVID-19 Stay-at-Home Orders Are Associated With Alterations in Mental Health Search Behavior in the United States. JMIR Ment Health. 2020 Jun 1;7(6):e19347.
※2:Matsumoto S, et al. Social Ties May Play a Critical Role in Mitigating Sleep Difficulties in Disaster-Affected Communities: A Cross-Sectional Study in the Ishinomaki Area, Japan. Sleep. 2014 Jan 1;37(1):137-45.
※3:中林孝夫, 栗山健一. 大災害と不眠. 精神医学. 59(6): 559-565, 2017.
※4:高原円. ストレスと睡眠. 医薬ジャーナル. 53(2): 663-666, 2017.
※5:https://www.uptodate.com/contents/126678 (UpToDate: “Patient education: Coronavirus disease 2019 (COVID-19) overview (The Basics)” ; Version 36.0. 閲覧日:2020年6月8日)
※6:http://jahp.wdc-jp.com/news/doc//5tips_Japanese.pdf (日本健康心理学会「外出自粛中によい睡眠を確保するための5つのヒント」 閲覧日:2020年6月8日)

 
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