座位行動時間①
順天堂大学COIプロジェクト室 博士研究員
沢田秀司
COVID-19(新型コロナウイルス感染症)に端を発し、新たな生活様式への対応が必要となっています。STAY HOMEを心掛けた生活で心身の健康を守っていくためのポイントについて、シリーズでお伝えしていきます。今回は、座位行動時間について取り上げます。
国内では、2021年1月8日、埼玉県、千葉県、東京都及び神奈川県を対象区域とし、コロナ禍では二度目となる緊急事態宣言が発出されました(※1)。その後、対象区域や期間の変更を経て(※2,3)、2021年2月15日現在においても、緊急事態措置の実施が継続されています。すなわち、感染拡大を防止するための対策の一つとして、不要不急の外出自粛が呼び掛けられ、STAY HOMEやテレワークへの対応が求められる状況が続いています。いわゆる『おうち時間』が長くなったことで、座って過ごす時間や、デスクワークの時間が長くなっていないでしょうか。近年、健康問題を考える上で、『座位行動』が注目されています。
『座位行動』とは、学術的には「座位、半臥位、もしくは臥位の状態で行われるエネルギー消費量が1.5メッツ以下のすべての覚醒行動」と定義されます(※4)。すなわち、眠っている状態を除き、座っていたり横になっていたりする状態のことを意味します。これには、机に向かったり、友人とおしゃべりをしたり、読書をしたり、 座ったり、寝転んでテレビを見たりといった行動が含まれます(※5)。こうした座位行動の時間が長くなってしまうと、健康上の問題が生じることがわかっています(※4)。そして、コロナ禍における健康二次被害を防ぐという観点から、座位行動時間を短くすることが必要であり、具体的な対策として以下の3点が提唱されています(※6)。
- 座っている時間を長くても1日あたり累積6~8時間までに減らす。
- スクリーン(テレビやパソコンなど)の前に座る時間を長くても1日あたり2~4時間までに減らす。
- 座っている時間の中断/休止回数を最大化するよう心掛ける。すなわち、座位1時間毎に最低5分間は立つようにする。
上記の中には、パソコンなどを用いたデスクワーク中心の方には厳しい目標もあるかと思いますが、座っている時間が短くなるよう工夫することは重要です。例えば、「デスクワークを開始する際に1時間のタイマーをスタートさせ、通知が鳴ったら一度席を立つようにする」というのは、一案かと思います。また違った場面では、「座ってテレビを見ている際、CMになったら立ち上がり、少し動くようにする」というのも、一案でしょう。また最近では、「歩行動作を一定時間行わないと、通知が鳴る」といった機能を持つ身体活動量計もあるため、こうした機器を活用するのも一案でしょう。(筆者も利用しています。)
コロナ禍が長期化してしまうことを見越し、長い目で心身の健康を保てる習慣を身に付けることが大切です。是非、ご自身の生活習慣に照らし合わせ、考えてみていただければ幸いです。次回は、座位行動時間が長くなることで生じる具体的な健康問題や、身体活動および座位行動に関する最新の指針について紹介します。
※1:https://corona.go.jp/news/pdf/kinkyujitaisengen_houkoku_20210107.pdf(閲覧日:2021年2月15日)
※2:https://corona.go.jp/news/pdf/kinkyujitaisengen_houkoku_20210113.pdf(閲覧日:2021年2月15日)
※3:https://corona.go.jp/news/pdf/kinkyujitaisengen_houkoku_20210202.pdf(閲覧日:2021年2月15日)
※4:https://www.mhlw.go.jp/content/000656521.pdf(閲覧日:2021年2月15日)
※5:http://www.tmu-ph.ac/news/data/short_version_last7_days.pdf(閲覧日:2021年2月15日)
※6:Pitanga FJG, et al. Physical Activity And Reducing Sedentary Behavior During The Coronavirus Pandemic. Arq Bras Cardiol. 2020 Jun;114(6):1058-1060.